『男』が妊娠-2
Politically correct、または逆にpolitically incorrectっていう言い方をします。
直訳すると「政治的に正しい」または「政治的に正しくない」。
人種や宗教、性的傾向その他、あらゆる面において、差別や偏見のない立場で意見を言う、とか公正な立場に立って行動する、っていうのがpolitically correct。逆がpolitically incorrect。
環境問題を最優先にハイブリッドを選ぶ人はpolitically correct。必要もないのにデカイ車を乗り回して、ガソリンを浪費しても気にしない人はpolitically incorrect。
言葉の選択もそうで、昔、大学のクラスメートが「Aさんはハンディキャップを背負っていて…」みたいな発言をした時に、先生が優しく、しかし断固として「Aさんはdisabledで…」って訂正されました。
つまりハンディキャップっていう言い方はpolitically incorrect。でもdisabledっていう言い方だと「障害のある」っていう、ニュートラルでpolitically correctな表現になるわけです。
で、こう前置きしておいて、今やアメリカで時の人になりつつある、妊娠中の男性、トーマスさんについて再び。
(この方についてご存じない方、宜しければこちらからお読み下さい。)
私は、例によってつべで見たんですけど、実際にご本人の口からお話をお聞きして、なんというか今回、色々と認識を改めました。
写真とコメントだけを読んだ時点での正直な気持ちは、「何じゃこりゃ!?」
思いっきりpolitically incorrectなリアクション;;
でも、ご本人と奥様のお話を聞いてると、だんだん「ふんふん。」って、お二人の状況を受け入れてしまうから不思議。
いえ、トーマスさん、なかなかチャーミングで可愛い人なんですよ、これが。
際どい質問にもユーモアのセンス一杯で答えて下さって、照れたり、緊張したり、涙ぐんだりしてるところは、いかにも人間的で普通の人。
自分の置かれた状況やどうしてこういう選択をしたかっていうことを、自分なりの言葉で伝えようとして下さってて、好感が持てました。コメントを読んだだけだと抵抗のある言葉も、ご本人の口から出るとなぜか素直に聞けるのは、やっぱりトーマスさんご本人の魅力だと思います。
実は、この有名なオプラのトークショー、私は初めて見たんですけど、彼女が人気のある理由も分かった気がしました。
トーマスさんの緊張をほぐしつつ、観客席の反応も確かめ、オプラと一緒にトーマスさんの話を聞いてる気にさせてくれるんですよね。質問の仕方も、上から物を言うんじゃなくて、相手を励ますような話し方で、どんな質問をしても下品にならない。
頭の良い人なんですね。
ご本人は子供の頃、虐待を受けていて、だから色んな問題を抱えたゲストを迎えても、ゲストの方に心を開いて話をしてもらうことが出来るのかも。器が大きいって感じがしました。(って、私がいまさら言うことじゃない;;)
話がズレた(汗)
トーマスさんと奥様が妊娠を公にしようと思ったのは、いずれ人にあれこれ言われる前に、自分達のことを自分達の言葉で語りたかったからだそうです。
妊娠した時点で、アメリカ中のトランスジェンダーの支援団体に、法律上のアドバイス等を求めて連絡したけれど、意外に冷たい反応しか返ってこなくてショックを受けたともおっしゃってました。
「World is not ready for something like this.」(まだそんなことが受け入れられる世の中じゃないんだ。)
そう言われたとか。
トランスジェンダーの意味すらよく分かっていない人が多いのに(私だ!)、トランスマン(トランスジェンダーの男性)が妊娠なんて、理解を超えてるし、受け入れられるはずはないって、トランスジェンダーのコミュニティーから突き放されたわけですね…。
それに対するオプラの切り返しが良かったです。
「I think world is taking it all in right now.」(今、世の中の人がこの状況を理解しようとしているところだと思うわよ。)
たしかに。
そこでまず、トーマスさんの生い立ちをササッと。
「彼」は3人兄弟の真ん中にトレーシーさんとして生まれました。父親がアジア系で、お母様が白人。ハワイの出身だから、ここら辺キアヌ・リーブスと同じですねw (って、まったく関係ないっ;;)
お父様は、まったく家庭を顧みない、アジア系の男性の典型(?)だったそうで、子供達はお母様だけに育てられたようなものだったとか。それなのに、そのお母様がトーマスさんが12歳の時に自殺してしまいます。
その後は、お父様に育てられたトーマスさん。やがてハワイのミスコンで最終選考に残るほどの美少女に成長!

当時は、お父様に強く勧められてモデルを目指していたんだそうです。
ほんとエキゾチックな美少女ですよね~♪
それなのに、胸が膨らみ始めた時、「自分の身体に裏切られた気がした。」っておっしゃってました。
でもボーイフレンドはいて、20代になるまでは、女性に性的に惹かれることもなかったとか。それが20代になると、女性と付き合うようになって、自分が「男」だっていう自覚も生まれてきたんだそうです。
ただ性転換するって決めた時、当時付き合っていた彼女には、「どうしてレズビアンのカップルでいちゃいけないの?」って聞かれたとか。
これ、私も実は不思議だったんですよね。
トーマスさんによると、
「セックスのパートナーが誰かっていう問題と、自分自身を男だって思うことは、全く別の問題。」
なんだそうです。
理屈はそうでも、やっぱり理解するのは難しいですよね?
とにかく先を続けますと…。
トーマスさんは、最終的に性転換に踏み切って、その頃に今の奥様であるナンシーさんと出会って付き合い始めたんですけど、その時から「いつかは子供が欲しい。」って、思っていたんだそうです。
今回、一度の失敗を経て妊娠できたことで、二人とも本当に幸せなんだって、すっごく嬉しそうに語っていらっしゃいました。
旦那様のお腹が大きいことを除けば、ラブラブなごく普通のカップル。
トーマスさんのお話を聞いて、私なりに考えたのは、トーマスさんを「男」として見るから問題なんじゃないかな?ってこと。
もちろん、ご本人は男性として見てもらいたいと思っていらっしゃるわけですし、法律上も男性なわけですけれど、トーマスさんはトーマスさん。この世でたった一人のトーマスさんっていう人格であるわけで、トレイシーさんだった女の子も、やっぱりトーマスさんっていう人の精神の一部なんじゃなかろうか、と。
トランスジェンダーの男性、女性の中には、その人の選択した性だけじゃなく、選択しなかったはずの性も存在していて、それを生物学上の性の定義に押し込めようとするから無理があるのかも?って思ったんです。上手く言えないんですけど…。
そうすると「子供が欲しかった。お腹の中に子供が居るって素晴らしい気持ちだ。」って言う「彼」の気持ちも分かるような気がしました。
「自分は男だと思っても、周りは自分を男として扱ってくれない。だから外見を変えるしかないんだ。」
「彼」が欲しかったのは、生物学上の男の身体じゃなくて、周りの見る目と自分の思う自分が一致する身体だったのですね。
生物学上、法律上、どう定義されようと、子供の頃の辛い体験を乗り越えて、自分らしさを手に入れたトーマスさんが、とっても魅力的な人であることだけは間違いないです。
私、「普通の女が、こんな変な奴、愛せるわけないじゃん?」って思ってたんですけど(我ながら凄い偏見;;)、トーマスさんを見てると、奥さんが「彼」に惚れてしまったのも分かる気がしました。
経済的な問題もあるでしょうし、トランスマンの方が皆同じように思っているとも限らないでしょうけれど、トーマスさんにとっては自分が妊娠することは、自分の中でなんら矛盾のない選択だったのですね。
外見はまだ男性に見えるトーマスさんですけど、ホルモン注射も2年前に止めていて、赤ちゃんも健康だそうです。
そんなわけで今回、改めまして、可愛い男性妊婦のトーマスさんの幸せをお祈りしたいと思いました。
(^-^)
って、ここでpolitically correctに綺麗に終わりたいところですけど、もう少し突っ込んだ話をオプラが聞いてくれましたので、そこだけ書いときます(汗)
胸の手術について…
「乳首を取って、ちょっと形を作り変えて、胸を削ってから、またそれを付け直したんだ。」
下のモノについて…
「ホルモン注射のおかげで大きくなったよ。小さなサイズのモノって感じかな。サイズなんて関係ないよね?」
観客、いっせいに笑って、拍手パチパチ。
「ちゃんと性交も出来るんだよ。」
............(^-^;)
世の中には色々と知らないことがある…
最後にインタビューの一部を貼っときますねw
(サイトの方で拍手パチパチ押して下さった方、いつも本当に励みにさせて頂いています。ありがとうございました!)
2008/04/04 20:56 | ニュース・その他 | COMMENT(8) | TRACKBACK(0) TOP
コメント
下のモノが大きく?
翻訳でも紹介して下さったトーマス氏ですね。
胸を取り、下は付けるのかと. . . 男性ホルモンで大きくなるのぉ??う~む???
大きさなんて関係ないに大きな拍手ですか!共感を得たんですね~!!ははは、気にしてる人多いの?
日本語では『性同一性障害』の病名がついてますけど、考えて見れば、女性を好きな女性ではなく、心は女性を好きな男性なワケですね。で外見も男性にしたと。
ふむふむ. . . で男性になったトーマス氏は妻の替わりに妊娠をしたと!
そうかぁ~男性が妊娠したら確かに大騒ぎだけれど、もし子供が出来ない夫婦で、旦那様でも妊娠できるよ!!となれば、かなりの出産数になるかもしれませんね?
現実には妊娠には子宮と卵巣が必要なので不可能なんですよね~。あ、それで『トーマス氏って男になったくせに妊娠してズルイって』と、私はちょっとおもったのかな?
サクセロイドの開発と同時に、男性にも妊娠を!!
No:391 2008/04/05 00:56 | キョロリ #- URL [ 編集 ]
No title
こういう話題って、深く考えようとするから問題が大きく感じられるのであって、実態はぜんぜんたいしたことじゃなかったりするんですよね。
周囲だけじゃなく、当人たちにとってもの話。
私は常々、性別の差異は世間で言われているほど重大なものではないと思っているので、当人が性自認に齟齬をきたさないというのなら、トランスジェンダーの男が妊娠しようが女が立ちションしようが好きにしてくださいって感じ。
だいたい、これからもっと医療が発達したら、男でも普通に妊娠できるようになるかもしれないよー?
No:392 2008/04/05 07:25 | くろみみ #- URL [ 編集 ]
お返事
そうなんですよ。
手術で下を付ける方もいるらしいんですけど、トーマスさんはそうなさらなかったんですね。
でもホルモン注射を続けるうちに、クリ○トスが大きくなって、小さなペ○スになるんだそうです!
あんな豆粒みたいなものが!?
びっくりですよね。
しかも性交まで出来ちゃう!
でも睾丸はないから、性交が出来ても男性としての生殖能力はなくて、逆に子宮と卵巣は残したから女性としての生殖能力はある…って、書いてるうちにまた混乱してきたっ;;
そう言えば、男性が妊娠した、って書いてるサイトもあるんですよ。
http://www.malepregnancy.com/
全くのフィクションなんですけどね。
世の中にそれだけ男性の妊娠を求めてる人がいるんでしょうか?
妊婦であってもおかしくないくらい太った男の人は一杯いますけど(苦笑)
No:394 2008/04/05 20:48 | 蛍 #- URL [ 編集 ]
お返事
そうですねー。
でも、トーマスさんの場合、一度は妊娠に失敗して卵管を片方失ってらっしゃいますし、色んなお医者様に診察を拒否されたり、ご家族からも化け物って言われて、大変は大変な思いをされてるみたいです。
見も蓋もない言い方ですけど、このお二人はビジネスを成功させて経済的に恵まれているから出来た選択だなって思いました。
トランスジェンダーの特に「女性」に対する差別はアメリカの場合かなり深刻なので、そういう意味でも、子供のために環境を整えられるカップルでないと、こういう選択はありえないと思ったんです。
もちろん旦那様と奥様が愛し合って支えあっていることが一番大切ですけど。
ご本人達だけのことなら周りも騒がないと思うんですけれど、子供が絡んでると問題が複雑だし、トーマスさんもおっしゃってますけど、法律もどうなってるのか分からないですしね。
このお二人に関しては、考え抜いた末の結論だなっていうのが分かりましたし、環境の良い所に住む経済力もお持ちのようですので、生まれてくる子も幸せになってくれるだろうなって思いました^-^
ただアメリカって基本的には、ものすごく保守的な国で、お医者さんですら、子供を育てられるかどうか精神科で判断して貰えって、お二人に指示したくらいだから、下手すると、このお二人から子供を取り上げて「普通の」夫婦に育てさせようなんて言い出す人も出てきそう。
くろみみさんのおっしゃるように、周りが騒ぐと余計に問題が大きくなるんですけど、ご本人達がメディアに登場することを選んだ時点で、騒いでくれって言ってるようなものですからねー。
っていうか、ご本人達は、皆に自分達の置かれた状況についての理解を求めてるわけで、そのためにも色んな質問に答えて下さってるわけだから、私も自分なりに出来るだけ考えてみようかなって思ったんです。
おかげでやたらと長くなってしまいましたけど(汗)
って、お返事も長い;;
男が妊娠…そういう需要があるのが謎?(笑)
その前にポータブルの人工子宮とか出来そうだなー。
No:395 2008/04/05 20:49 | 蛍 #- URL [ 編集 ]
No title
なるほどですね~。やっぱ直接本人の言葉で聞いた方が理解しやすいですね。
文章だけだと、感情がうまく伝わらなかったり、どんな表情や口調で発した言葉かわかりにくいですもんね。ブログで記事やコメント書いてても、相手に上手く伝わってるか不安だったりしますし(笑)
>今、世の中の人がこの状況を理解しようとしているところだと思うわよ。
なかなかウマイ事おっしゃいますね!黒柳徹子ぢゃ~こうは返せないと思います。(オプラさんのこの番組は、米国版「徹子の部屋」って日本メディアは紹介してましたケド・・・。)
ってか・・・美少女ぢゃんッ!!ちょっともったいないなぁ~。なんて・・・。
ってか・・・ホルモン注射でデカくなるモンなんですか!?人工ち●こですよね?しかも性交可能?勃起できるんですか!?ひゃ~!スゴイんですね性転換手術の技術って。
No:399 2008/04/07 21:52 | るぴ子 #- URL [ 編集 ]
お返事
ほんと文章だけだと難しいですよね。
あんまり長々書いても却って分かりにくいですし^-^;
>米国版「徹子の部屋」
ほほう…。
「徹子の部屋」は見たことないんですよ。
ひとし君人形が出るクイズ番組は昔見てたけど、オプラとキャラが違ったような?(笑)
ほんと綺麗な子ですよね。
しかも、ホルモン注射とかしてたのに妊娠出来ちゃったくらいだし。
女性としてはもったいないと思っちゃいますよね~
人工ち●こじゃなくて、ホルモン注射のみで、小豆サイズのクリ○トスが小さなち●こに成長したんですって。
「ちゃんと妻とも性交出来るんだよ。」って、当然のような顔でおっしゃってました^-^;
No:404 2008/04/08 20:55 | 蛍 #- URL [ 編集 ]
トーマスさんへ
世界まるみえTVで見ました(≧ε≦)男が妊娠しても全然素晴らしいことだから!命が誕生するのってすごく奇跡的なことだから!男が妊娠しても全然変なことじゃないと思う!これからゎ男と女両方共助けあわなきゃいけない時代だし、逆にトーマスさん夫婦を見習わなきゃと思いました!頑張ってくださいo(≧∀≦)o
No:1385 2009/07/27 05:52 | しずか #- URL [ 編集 ]
しずかさんへ
日本のTV番組でも紹介されていたのですね~。
トーマスさんは先月、二人目のお子さんも無事出産されたそうですv
一人目は女の子で、今回は男の子。
奥様とラブラブのお写真もネットに載ってましたし、しずかさんのおっしゃる通り、お二人で力を合わせて素敵なファミリーを築いて下さると嬉しいです☆
No:1386 2009/07/27 19:42 | 蛍 #- URL [ 編集 ]
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