結婚したい理由-2
以前、バーモント州の上院で行われた同性婚に関する傍聴会で、
「どうして結婚したいのか?」
について話してくれた、ゲイの男の子のスピーチをご紹介させて頂いたことがありました(結婚したい理由)。
今回は再び、
「結婚」vs「その他もろもろ」(汗)
について書いてみます^^
あれ以来ずっと、アメリカの色んな州や自治体で同性婚を認めさせようという運動が続いていますが、メイン州のように、カリフォルニアと同じ州民投票によって一端は認められた同性婚が禁止された州もあって、アメリカ50州のうち同性婚が認められているのは、まだ5州に留まっています。
刻々と変わり続けるアメリカの同性婚マップ↓(ウィキピディア参)。
赤やピンクは州憲法その他の条例で同性婚が禁止されている州。
濃紺は同性婚が認められている5つの州で、青や空色は結婚に準じるシビルユニオンやドメスティックパートナー制度が認められている州です。(←少なすぎ;)
グレイは特に規定がないか、他の州で行われた結婚を認めている州。
では目がチカチカする赤青のシマシマは何かと言うと、例えばカリフォルニアの場合、Prop 8によって「結婚」こそ州憲法で禁じられているものの(赤)、「結婚」に準じるドメスティックパートナー制度が認められている(青)という状態。
基本的には、同性カップルを守る法律が充実している州だと言っていいと思います^^
現在カリフォルニアではProp 8を違法とする訴えが、連邦裁判所に持ち込まれていますが、これはこんな風に一つ一つの州で同性婚を認めさせても、結局は連邦レベルで結婚が認められない限り、あまりにも法律上の不公平が多いからだ、というのが理由の一つ。
州ごとにパートナーシップに登録しているカップルは、結婚しているカップルには認められている1000以上もの福利厚生を受けられない、というレポートが提出されているそうです。( About.com より)
その全てについて書くのはムリですが(汗)、主なものだけ幾つか挙げてみます。
1) 配偶者の永住を申請する権利。
アメリカ市民は配偶者が外国人の場合、彼(彼女)のスポンサーとなって、配偶者の永住権を申請することが出来ますが、これは連邦政府の移民局が管轄のため、いくら州レベルで結婚が認められていても、同性カップルにはその資格がありません。
なぜなら彼らの「結婚」は連邦政府には結婚と認められていないから…。
最悪、「結婚」して一緒に暮らしている外国人のパートナーが居たとしても、本国に強制送還されてしまう場合があるのです。
メキシコ移民をターゲットにした移民法を通したアリゾナ州に対し、サンフランシスコやLAを始めとするカリフォルニアの各市がボイコット運動を起こしていますが、パートナーを合法的に永住させる手段のないLGBTコミュニティもこの反対運動に積極的に参加されているそうです。
こちらはLAで行われたメイデイの行進の様子(画像はこちらより)
左の画像のサインは、ArizonaのZがハーケンクロイツになっていて、「アリゾナをボイコットしよう」と読めます。小さくて見づらいですが、右の画像にはメキシコ国旗を背負った男性と「自分はクイアで移民だ。」というサイン。
結婚より先にまず、同性のパートナーの永住権獲得の権利だけでも認めさせようという法案が、2000年から2009年の間に6回もアメリカ議会に提出されているそうですが、未だに通っていません…。
ちなみに以下の国々は、同性の配偶者の移民を認めているそうですv
オーストラリア、ベルギー、ブラジル、カナダ、デンマーク、チェコ共和国、フィンランド、フランス、ドイツ、アイスランド、イスラエル、オランダ、ニュージーランド、ノルウェイ、南アフリカ、スペイン、スウェーデン、イギリス。
2) 病院での面会権
パートナーが入院した場合、彼(彼女)と面会出来る、パートナーのために医療上の判断を下せる、というのも結婚している異性のカップルには認められている権利ですが、同性カップルには認められていない州が多いです。
アメリカにはHIPAA(Health Insurance Portability and Accountability Act)という、医療機関が患者の病名その他、個人情報を漏洩しないよう厳しく定めた法律があります。
そのために、例え法律上の夫婦であっても、本人に代わって患者の診察結果を医者から聞きだす、ということは通常は認められません。
ただ、患者本人が意識不明、もしくは自分で医療上の判断が出来ない状態にある場合、結婚している夫婦であれば相手のために医者から詳しい説明を受け、緊急手術を行うかどうかなどを患者に代わって決めることが出来ます。
もちろん、危篤状態の患者にも家族として面会が許可されます。
カリフォルニア州でドメスティックパートナーの登録をしている同性カップルの場合、カリフォルニア州内の病院であれば夫婦と同様に扱われますし、同じような制度のある州でも同様の権利は保障されていますが、問題は真っ赤の州、同性間の結びつきに何の法的保障も認めていない州の場合。
どんなに長い間一緒にいる家族であっても、自分達の関係を守る法的手段を講じていたとしても、同性カップルは「赤の他人」として扱われてしまうのです。
パートナーとフロリダを旅行中のレズビアンの女性が、突然脳梗塞で倒れて緊急入院した彼女との面会を拒否された事件がありました。
お互いに相手を法的代理人とする委任状(パワーオブアターニー)をきちんと用意していて、それを病院側にも提示し、面会を止められる法的根拠は何もなかったのにも関わらず、です。
病院に担ぎ込まれてから8時間後、18年連れ添った彼女の大切なパートナーは、愛する家族と会うことを許されないままその病院で亡くなっています。
「3人の子供と一緒に病院の廊下で泣きながらずっと待っていた。でも彼女の手を握ってあげることもできなかった。」
しかも残された彼女が病院側を訴えたにも関わらず、連邦裁判所は訴えを却下しました。
これを受けて、ようやくオバマ大統領が、
「連邦政府の福利厚生を受け取っている病院は、同性のパートナーを含む、血縁または婚姻関係にない人間への面会の権利を保障するように。」
という声明を出していますが、これも法律上の結婚さえ認められているなら問題にならないことで、これだけではとても充分とは言えないし、遅すぎます。
フロリダは同性婚を州憲法で禁じている上に、同性カップルの養子縁組も認めていません。そのためでしょうか、このレズビアンのカップルさんは用心深く旅行先にまで委任状を持ち歩いていたのに…。
それだけ相手を大切に想っていた二人が、最後にこんな形で引き裂かれてしまうなんて悲しすぎます。こんなこと、絶対に二度とあってはいけない!
3) 遺産相続の際の税金免除、福利厚生の授与
経済的な問題も大きくて、夫婦間なら無税で認められている遺産相続が同性カプの場合は課税対象になりますし、パートナーのどちらかが先に亡くなった場合、残された方には彼(彼女)の年金を受け取る権利がありません。
ドメスティックパートナーとして登録していても、パートナーを受取人にするという遺言状を用意していても、パートナーの遺産を相続する際に相手の親族に訴えられた場合、それほど簡単に遺言を認められないとも聞きます。
そうでない場合でも、夫婦間なら無税の場合に相続税が掛けられてしまう…。
例えば、夫婦が二人の名義で30代で家を買い、60代でローンを払い終わったとします。
カリフォルニアの場合ですけど、地価の高騰で70年代に1千万で買った家が、ローンを払い終わる頃には1億円の物件になっていたりします。それでも夫や妻が亡くなった場合、残された方は自分の家を「相続」するのに税金を払う必要はありません。
でも同性カップルの場合はここで課税されるのです;
LGBTの権利のために様々な法的アドバイス、訴訟を行っている非営利団体ラムダリーガル様(Lambda Legal)によりますと、二人の名義で財産を登録していた場合でも、その財産の取得に二人が同等の貢献をした(お金を払った)という証明が出来ない場合、それは贈与と見なされて、相手の50%分だけでなく100%全て、上記の例で言うと1億円が課税対象になるそうです。
パートナーが亡くなっただけでも辛いのに、下手をすると税金を支払うために住み慣れた家を売ることになってしまう…;
(注:ご存知とは思いますが、法律上の夫婦であっても、残された方がアメリカ市民でない場合も課税されます。アメリカ人と結婚していらっしゃる腐女子様、念のために市民権を取得しましょう^^)
健康保険を含むパートナーの福利厚生を受けられないことで、同性カップルの方が合法的に結婚している夫婦より貧しいという統計も出ているそうです。(こちらの記事)
その他にも結婚している夫婦には当然のように認められている権利の多くが、同性のカップルには与えられていません。
だから「結婚」という形で同性間の結びつきが認められることは、ゲイやレズビアンのカップルさんにとって、色んな意味でとても大切なのですね。
話が変わりますが(汗)、こちら↓はサンフランシスコ在住のアーティストの方がデザインされたTシャツ。
裏には、LEGALIZE LVE(愛を合法化しよう)っていうメッセージが書かれていて、色んな形のファミリーをサポートする表のイラストとマッチしています。
ジムのクラスで着てる子がいて、とってもいいなぁと思ったので売っているサイトを教えて貰いましたvv
Judyland Design
1枚30ドルですが、売り上げは上記のラムダリーガル様に寄付されるそう。
海外からのお取り寄せはしてらっしゃらないみたいですけど、こういうデザインのTシャツなら着やすくないですか?
見る人が見れば、「あ、いいな♪」って思いますし、それで偶然同じような考えの人と出会って会話が弾んだりもvv(←アメリカ在住の方にお勧め!)
ささやかながら、この夏、私もこれを着てみんなの愛をサポートしたいと思います^^
Let’s Legalize LVE♪
2010/06/05 08:05 | ゲイ婚 | COMMENT(12) | TRACKBACK(0) TOP
コメント
ウェディングに期待♪
小説も記事もステキですね。同性婚、早く色んな所で認められてほしいです。UTSではいよいよ最終章…気になるっっ!けど終わってほしくない…。大好きです、敬吾と祥平のカップル♪完結後も短編とかで見たいなぁ・・・。Tシャツはスゴクいいと思います。意思表示の方法としてもスマートだと思うし。日本のTシャツのロゴとか汚い言葉や意味不明なの多いからもっとメッセージ性を大切にしてほしいといつも思います。
No:1752 2010/06/06 19:12 | wg #- URL [ 編集 ]
wgさん、こんばんは
>小説も記事も
ありがとうございます!
大人同士が合意で結婚したいというのを止める理由は何もないのに、いつまでもこの問題が進展しないのがほんとに不思議です。
そしておかげさまでUTSも最終章を迎えることが出来ました。
本編終了後も、番外編でその後の様子をお伝えできればと思っていますが、もし宜しかったら、それまでは引き続き本編の方をヨロシクお願い致します!
このTシャツのデザインはほんとに上手ですよねvv
誰でも着易いメッセージになってるところが素敵だなって思いました☆
No:1753 2010/06/06 19:14 | 蛍 #- URL [ 編集 ]
20年以上も前に
日本のゲイ雑誌で、この「医療と相続の不利」について読みました。 理不尽さに脳が煮えるような感じがしたことを覚えています……アメリカでさえ、あんまり変わってないんですね。 て、その後、変えるために私自身が彼らのために何をしたかっていうと何もできていませんが……欧州のほうが大らか、というか人権について血を流した経験の多さが成せる業でしょうか。
No:1754 2010/06/07 04:20 | misia2009 #- URL [ 編集 ]
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No:1756 2010/06/07 20:19 | # [ 編集 ]
なんと!
他の方のコメントを見て、び、びっくり!
敬吾と祥平でピンときました。
蛍さん「sugarland」の主さまだったのですねぇ!
一時、ずーっと通っておりましたヨ。
そうだったのかぁ。。。暫く、ネットから遠ざかっていた時期があったので、記憶が飛んでました。
凄い偶然だわぁぁぁぁ、当時はこちらのブログを
拝見してなかったのかも。本サイトの方もまたお邪魔させていただきますっ!
ゲイに興味を持ったのは、腐で小説から入ったのですが、知り合い(日本在住の米国人)を頼って日本に来たゲイの米国人と物凄く気が合っちゃって、いろいろ話したのがきっかけなんですよねぇ。彼とは今は連絡取り合ってないけど、元気かなぁと時々思い出しています。
ゲイに対しての偏見を無くそうと思ったら、とりあえずは法律制度を整えるべきですよねぇ。まず、アメリカがお手本を示してもらいたいなぁ。そうすれば、日本も追従するのじゃないかしらんと甘い考えを持っています。
ゲイの間での子供、子供の出来ない夫婦の子供って本当にイロイロと考えや思いががあるだろうなぁと子供が欲しくても出来なかった私は思います。(うちの場合、不妊治療や人工授精、養子縁組に関して夫婦や家族でめちゃくちゃ揉めたので、疲れた!)
No:1757 2010/06/09 17:36 | 猫屋敷ふね #AQfJdVC2 URL [ 編集 ]
misiaさん、こんばんは
日本でもやっぱり問題は同じなんですよね;
こういう法律上の差別というのは、人によっては鬱の原因になったりするとも聞きますし、本当に早くなんとかしないとって思います。
自分の未来の可能性が人より限られたものだって思うのは辛いですから…。
でも私に出来るのもせいぜい投票するくらいで、ほんともどかしいです;;
No:1758 2010/06/09 21:01 | 蛍 #- URL [ 編集 ]
秘密の初コメ様へ
はじめまして!
レスはサイトの方で♪
No:1760 2010/06/09 21:03 | 蛍 #- URL [ 編集 ]
ふねさん、こんばんは
ほんとに偶然ですっ!!
これもブログをやっていて良かったことの一つですね~♪
もし宜しかったら、またサイトの方も可愛がってやって下さい☆
やっぱりきちんとした法律があるのは心強いと思います。
この人達は出来るけど、この人達はダメっていうのはおかしい!
ヨーロッパや他のキリスト教圏でもとっくに同性婚が認められているのに
どうしてアメリカはいつまでもこうなのか…;
今は子供の出来ないカップルさんにも色々と選択がありますよねv
どうやら私自身には「絶対に子供が欲しい!」という気持ちが欠けているようで(汗)
不妊治療をしてる友達を見てると逆に罪悪感を感じてしまうのですが…;
でも例え子供が居なくても、旦那様と仲良くされていればそれが一番ですよね♪
No:1761 2010/06/09 21:04 | 蛍 #- URL [ 編集 ]
こんばんは♪
そういえば、日本の某公○員の規程には、結婚をしていない夫婦と同等の内縁関係にあるパートナーにも配偶者と同じ待遇の忌引きや遺族年金等の取得を保証する規約がありましたが(それにもかなり驚いた)、それが同性である場合までは明記されていませんでした。
日本はとりわけ同性愛者に対して厳しくも優しくもなさそうだけど、そういうところはどうなのでしょうね。
昭和の時代にだってまだまだ嫡子制度が残っていたお国ですから、そういうところはかなり杜撰そう。
未だに離婚後の再婚を男女で差別している国でし…(-_-;)
記事には関係ないのですが、W杯記事にいただいたコメレスでのご質問のお返事です。
今さらですが(^^;
ズラタンが出場できない理由は、怪我じゃなくてチーム(確かスウェーデン…のはず)が予選敗退したからです;;
ヨーロッパは強豪揃いなので勝ち抜くのが大変(>_<)
イケメン度対決でも強豪揃いだから、やはり選び抜くのが大変ww
これから約1ヶ月、どんな萌えが待っているのか楽しみです(^-^)b
今夜の更新も楽しみです!
No:1762 2010/06/12 04:35 | 葵 #5XrOZ5hQ URL [ 編集 ]
葵さん、こんばんは
内縁関係…そう言われてみると、そういうカップルさんもいらっしゃいますよねv
それなら同性のカップルさんにも同じ規定を設けていいはずなんですけど…?
ほんとにその辺が気になります!
>ズラタンが出場できない理由は、怪我じゃなくてチーム(確かスウェーデン…のはず)が予選敗退したからです;;
そっか!ズラタン選手はスペイン出身じゃないんですね…(←バカ;)
無知な私めにご教授ありがとうございました(_)
ということは、例の写真はピケ様とのしばしの別れを惜しむものなのか…?
あの密着度がどうしても気になるっ!(^^;
No:1763 2010/06/13 19:45 | 蛍 #- URL [ 編集 ]
横レス~
こんにちわ~ ご訪問ありがとうございました。
先にも書いた雑誌で、「男女の内縁関係なら或る程度認められる財産相続などの権利が、同性カプでは認められない」ので運動を起こしている、的な記事もあったので、……たぶん今でも認められていないと思います。
日本は「見て見ぬふり」「野暮は言いっこなし」な文化で、ふだんはゲイに関してマトモな言説は一切出てこないです。日常会話レベルでも、ニュース等でも。 いわゆる「クィア」な美容師さんなどが「オネエキャラ」としてTVタレント出演しているだけで、それによるリアルゲイの恩恵は何もない、そうです。
男同士で仕事の出張にビジネスホテルをツインで取っても、レストランで男二人が食事をしても、ゲイ扱いされない国なので、デートの隠れミノには事欠かず、クィアでない芸能人が「ゲイか否か」で騒がれることもないです。
その代わり権利もない、という、良くも悪くもほっとかれてる、ってところでしょうか。
ただし、公的機関(公民館など)の利用について、ゲイ団体だから利用させないという判断をした自治体に対して、最高裁が差別を禁じる判決をすでに出したので、いったん声を上げると、判例レベルでは通りがいいような気がします。権力側が露骨な差別をすることは嫌われるようです。
法律整備は例によって、いい法案が出ても途中で骨抜きにされる国なので……まだまだかな。
No:1778 2010/06/21 23:33 | misia2009 #- URL [ 編集 ]
misiaさん、こんばんは
「内縁関係」はOKでも同性同士だとダメなんですね…;
ゲイと言っても色んな方がいらっしゃいますけど、どうしてもTVに出てらっしゃる方のイメージが定着しますよねー。
日本でもだんだん会社などでカムアウトされてる方が増えているとお聞きしますけど、やっぱりまだまだ少ないということなのでしょうか…。
なるほど、隠せるから隠すみたいな感じ?
それはそれで楽なのかなー。
でもやっぱり法律できちんと差別をなくすのって大事です!
公的機関の利用に関してきちんと抗議された方がいらっしゃるのは凄いですねv
そういうことの積み重ねが大切なんだと思います。
もちろん最初に先頭に立って頑張られる方は半端なく大変だと思いますけど(汗)
少しずつそういう判例が増えていけば好いですよねvv
No:1780 2010/06/23 20:34 | 蛍 #- URL [ 編集 ]
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